歴史ものって・・・うん。(じーん)

凶暴乱舞 (BEAM COMIX)

凶暴乱舞 (BEAM COMIX)

凶暴乱舞  
渡海(ドヘ)


作者は韓国人。
物語は始皇帝が倒れた直後の混乱のなかで陰謀に巻き込まれた将軍文蘇の姿を描いたものです。
この作品は日本人作家とは違った熱さがにじみ出ています。
最初のカラーページ、夕日に染まる大地の先を見つめる武将の姿にまず心を奪われます。
そして本編、独特のコマ割や光と陰を巧みに用いて描かれる森の木漏れ日の中での戦いに圧倒されます。
続く黒塗りのページにはナレーションのように時代背景が語られます。
まるで映画を見ているかのような不思議な感覚になります。これは新鮮!
また、漫画全体を覆う曇りの日のような日差しの具合は、晴れることのない文蘇の心や
混乱の中を生き抜く人々の不安や怒りといった感情をドラマチックに写し出しています。
さら絶妙なタイミングで回想が入ることで伏線解明→心情理解→新たな伏線創出と一連の流れを生み、
感情移入が進み血の通った(魂の篭った)台詞の理解が生まれどんどん物語りにはまっていきます。
言い換えれば無意識のうちに自分の中にキャラが宿り、
書かれた台詞に熱をを込めて読める状態になるということです。
台詞を吐くのはキャラですが、それを読みあげるのは読者自身の作業です。
この無意識の作業に魂を込めてくれる演出、これが異国の作者が持つ熱さであり魅力です。


同じ作者の「大帝の剣」は序章とはいえあまりに台詞が少なくて正直心配だったけど「凶暴乱舞」を読んで安心した。
はやく続きが読みたいなぁ。